自転しながら公転する、を読んで読後感が良くて
著者の他の作品も読んでみたいと思い直木賞受賞作の本書を読んだ。
5編の短編からなっていてすべてテーマは「無職」について。
いつの日か、職業を偏見だけで判断したり、
その人を判断したりすることに違和感(嫌悪感)を覚えることがある。
ただ、よくよく考えてみると実は自分もそう思ってしまうことがある。
経験もしたことがないくせに、イメージだけで。
そうやって偏見を持ったままで死んでいくのはあまりにも悲しすぎる。
「何もかもが面倒くさかった。
生きていること自体が面倒くさかったが、自分で死ぬのも面倒くさかった。
だったら、もう病院なんか行かずに、
がん再発で死ねばいいんじゃないかなとも思うが、
正直言ってそれが一番恐かった。矛盾している。
私は矛盾している自分に疲れ果てた。
だったら、もう病院なんか行かずに、がん再発で」
「憎んでいるということは、愛してもいるということだ。」
「損の種をまいているのは、往々にして自分なんじゃないかな」
「何十年もかかって客が染みつけたカウンターの消えない汚れ。
新品で清潔な店なら金さえあればいくらでも作れるが、
歳月が与えてくれた情緒は金では買えない。」
著者について調べていたら昨年死去されたそう。
昨年、ツイッターで元気そうな姿を見た覚えがあるのにな、
非常に残念。。
※各5編の短編は1999、2000年に発表、掲載。